2010/03/19

卒業式「学長のことば」(名古屋音楽大学平成21年度卒業証書・学位記授与式/2010年3月19日)

音楽学部卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
大学院音楽研究科修了生の皆さん、修士課程修了おめでとうございます。

若いみなさんの晴れの門出にあたり、教職員を代表して学長として一言お祝いの言葉を述べさせていただきます。

卒業生ならびに修了生の皆さんは、今日の卒業式を機に、今まで育てていただいたご家族をはじめ、お世話になった多くの方々に対して感謝の念を新たにしていただきたいと思います。

卒業生、修了生の保護者の皆さん。本当におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。卒業生、修了生はこうしてみな立派に育ちました。今日の晴れ姿をぜひ目に焼き付けていただきたいと存じます。お子様をここまでお育てになるには並々ならぬご苦労があったと推察いたします。しかしそうした苦労に比べれば、わが子が成長していくことの喜びのほうが何倍も何倍も大きかったことでしょう。本日は本当におめでとうございました。

人は一人で生きることはできません。人間は本質的に高度に社会的な存在です。
人は人によって支えられ、社会によって支えられています。人間は社会的な制度や仕組みを発達させることによって、安定した生活を確保しようとする唯一の生き物です。そうした、自分を支えてくれている社会的な環境にも常に思い至ることのできる社会人になってほしいと思います。加えて今後は、皆さん自身のためにも、また皆さんの後に続く世代のためにも、そうした社会的な制度や環境を支え改善する役割も果たしていってほしいと思います。

音楽学部卒業生の皆さんは、音楽学部の全課程を終了いたしました。本学の学部卒業生には学士(音楽)の学位が与えられます。学部卒業生の中には大学院に進学し更なる研鑽を積む者もおりますが、そもそも学士という学位の意味は、社会で通用する力を身につけたということを大学として認定することにあります。
学部卒業生の皆さんは大学4年間の学士課程教育を通じて、十分に満足のいく学士力を身に着けることができたものと思います。学士としての力、すなわち社会で生きていく力を身につけることに大学生活4年間のひとつの大きな意味があります。

この意味で学生会活動やサークル活動、演奏会の企画や実施、さらには学内外で行うアルバイトなども、学生時代に体験できる重要な活動のひとつです。そうした活動を通じて、人間はトータルに社会性を身につけていきます。

皆さんは音楽大学を卒業しました。音楽学士ということの意味は、社会人としての基礎的な力を身に着けたという証であると同時に、みなさんが音楽の専門課程を修了したという証です。すなわち、音楽の専門家を養成するための高等教育課程を修了したということを意味します。音楽修士の学位を取得したということは、より高度な音楽の専門家としての認定を受けたことを意味します。

みなさんはこれから音楽の専門家として社会に出て行きます。音楽を職業とするか否かにかかわらず、皆さんは名古屋音楽大学の学士課程もしくは修士課程を卒業した音楽の専門人です。社会の中でさまざまな面において、これから音楽の専門人としての役割が期待されることでしょう。

皆さんが学んだ同朋学園、そしてこれを設置母体とする名古屋音楽大学は、親鸞聖人の同朋和敬の精神を建学の理念としています。本学の学則の第一条には次のように書いてあります。

「名古屋音楽大学は、教育基本法及び学校教育法に基づき、仏教精神、ことに親鸞聖人の同朋和敬の精神により真理を探求し、創造の精神を高揚して、現代に生きるまことの人間知性を開発するとともに、音楽に対する洗練された感覚と深い洞察の眼をもって、未来を指向する芸術性ゆたかな人材を養成する。」

日本のすべての大学は、教育基本法と学校教育法に基づいて設置されていますが、それに加えて本学においては、親鸞聖人の同朋和敬の精神により真理を探究すること、創造の精神を高揚してまことの人間知性を開発すること、音楽に対する洗練された感覚と洞察の眼を持って未来を指向する芸術性ゆたかな人材に育つことが期待されています。

本学の教職員は日々、そうした人材を育成すべく、音楽と学生に対する深い愛情を持って、レッスンや授業をはじめとする大学業務に専念しております。ここで教職員の皆さんにもあらためてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。そして今後とも後進の育成にご尽力くださいますようよろしくお願いいたします。

さて、卒業生ならびに修了生の皆さん、社会に出てからも本学で学んだ建学の精神を忘れずに、社会に貢献できる音楽の専門人として活躍されることを期待しております。

人間には長所と短所があります。欠点のない人間はいません。欠点を指摘することも重要ですが、一人ひとりの人間が成長していくうえで必要なことは長所を伸ばしていくことにあります。社会は多様な人々の集まりです。さまざまな個性をもった人間が存在するのが社会です。多様性があるからこそ社会は進化するのです。社会をよりよいものにしていくうえで大切なことは、欠点を指摘しあうことではなく、個性の多様性を前提にして、それぞれの長所を活かしあい協力し合うことにあります。自分の強みと相手の強みを活かしあうことでより豊かな関係性が生まれます。それぞれの人がもつそれぞれの強みを活かしあってこそ、組織も社会もよりよいものに発展していくのです。

音楽においても同じです。ひとりひとりそれぞれ違うリズムやメロディーを持っています。ハーモニーもアンサンブルも個性の違う他者との調和と響きあいが無ければ成り立ちません。この意味で、音楽はお互いを活かしあうという点にその本質があるといえます。

名音大の強みとしては何があげられるでしょうか。5つあげるとすれば、私は次の点がめいおんの強みであると考えます。
第一に、ハーモニーの力(調和する力)、第二に、アンサンブルする力(共感する力)、三つ目に、日々練習し学習する力(学習意欲)、四つめに、達成する意欲、達成する歓びを感じる力(達成欲)、最後に、前向きに努力する心(ポジティブ志向)。

ぜひ、自分の個性の強みを発見し、認識し、音楽と社会に向き合っていく力として活かしていってほしいと思います。

私は音楽大学の学長として、音楽を支援する文化づくり制度づくりに努めます。音楽を含む芸術・文化の発展は、社会的な文化や制度の中にあります。音楽活動を支援する社会的な文化を形成すること、音楽を発展させる諸制度を形成することに少しでも貢献することが私の役割だと考えています。

そのためにも、本学卒業生の皆さんには、社会からの期待に応える音楽文化の創造に貢献してほしいと思います。

学部卒業ならびに大学院修士課程修了、本当におめでとう。


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